今日は木曜。
今は三時限目と四時限目の間の休み時間。



「……あ。」


体育後で髪がぺたんこになった先輩が遠目に見える。


あたしがさりげなく下駄箱に目配せすると、同じタイミングで先輩が教室を見上げる。



─ その視線がぶつかった時

薄茶色の髪が揺れて、
ふにゃっと瞳を細くして、
笑顔で手を振ってくれる。


あたしはそれに、控え目に手を振る。

なんだか照れくさいのと、先輩に手を振るのは失礼かなって気持ちが半分はんぶん。



「もー、かれんはいいなぁっ!
すっかり先輩と仲良しじゃん」


先輩たちが見えなくなると、夏穂があたしの腕を掴んだ。


「そ、そうかな…?」

「佐藤先輩なんて、目が合ってもお辞儀だよ?まぁ、そこがクールでいいんだけどさー」


それだけ、佐藤先輩が好きなんだなぁ。

お辞儀してもらえるだけで、十分だと思うけど。