レモンにはちみつ




「とりあえず、出よっか」


先輩に促されて職員室を出ると、先輩はあたしを見つめた。

まっすぐに、しっかりと。


「どうして、なんですか…?」


その視線が恥ずかしくて目を逸らそうとしたけど、自然と口から漏れた言葉に、逸らすタイミングを失った。


「練習中に捻っちゃったんだ」


「バカだよねー」と付け足して笑う先輩に、あたしの方が泣きたくなる。



…無理して、笑わないで。



「先輩は…、先輩は、バカなんかじゃないです…!」

「……え?」

「誰よりバスケが好きだって、みんなわかってます!怪我しても練習し続ける姿を見てるから。先輩の応援に勇気が出る人だってたくさんいます!…だから…、」



あたしなんかの訴えで、先輩が変わるなんて思ってないけれど。

誰にも頼らない先輩は強いと思うけれど。

笑ってる先輩が大好きだけれど。