「…………」
「……」
特に会話をすることもなく、二階にある職員室へ繋がる階段を降りる。
トトン、トトン
リズムよく響く瀬戸先輩が階段を降りる音が心地いい。
黙ってるのに会話を探すでもなく、ただ歩くだけの空気が好き。
斜め前を歩く先輩のサラサラした髪が好き。
ノートの適度な軽さが好き。
─…優しくしてくれる先輩が、好き。
実和子さんのこととか、
何も考えなくていいこの昼休みが
終わらなければいいのに。
職員室が、もっと遠ければいいのに。
非現実的なことばかり思い浮かべて、先輩の後ろ姿を見つめながら歩く道のりは思っていたより長くて。

