でも、いつまでもこのままのわけにはいかない。
あたしは静かにしゃがんで、ノートを集め始めた。
─…その時。
「うわ、だいじょーぶ?」
聞き慣れた、でもドキドキする声と共に、ふわふわと風で揺れる髪が視界に入った。
自然と止まる、ノートを集める手。
あたしを照らす初冬の日差しが、暑く感じられる。
止まったあたしの手に気付いたのか、ふっと視線を上げて。
「─…あ、“勝利の女神”だ」
いたずらっ子みたいに無邪気に笑った瀬戸先輩が、あたしを見つめた。
「……っ」
その瞬間、のどに詰まるような感覚に陥って。
─ 息が、止まっちゃいそう。

