「…あ、試合始まっちゃう!瀬戸、行こっ」
不意に、実和子さんが焦ったように瀬戸先輩の腕を掴んだ。
あたしも促されてコートを見ると、選手が並んでいて。
マジメな顔した優人が目に入った。
「やべっ、前行っとかなきゃ。じゃあ、またね!」
「今度はゆっくりしゃべろうねー」
「…あ、はいっ」
笑顔であたしに手をふる二人に、あたしも振り返した。
「夏穂、行こう」
さっき、実和子さんが先輩の腕を掴んだように、あたしも夏穂の腕を掴んで。
─…あたしも、先輩に触れたい。
そう思ってしまった自分が恥ずかしかった。
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