「…もう8時5分だよ?」
「無理無理無理っ! 合わせる顔がないよぉ…」
昨日の自分を、激しく責めています。
先輩はあんな風に言ってくれたのに、あたしは名乗りもしないで走って逃げるなんて。
いくら照れたからって、初対面の瀬戸先輩に照れ隠しだなんて伝わらない。
「今日は、無理…。予鈴鳴るまでここにいる」
あたしとは正反対で、廊下側にある夏穂の机に体を預ける。
夏穂はそんなあたしを見て、ため息をこぼした。
「もうー、今日は朝からあたしの話を聞いてもらおうと思ってたのに」
「…えっ、何の話?」
「意気地無しのかれんには話しませんー」
口を尖らせてプイッとそっぽを向いた夏穂。
…夏穂こそ、意地っ張り。