「…………」
「……」
どうしよう。
先輩は、何考えてるのかな。
チラっ、と。
ほんのちょっとだけ
盗み見る、とかよりもっともっと
素早く、一瞬だけ。
視線を先輩に移したら、
─…目が合ってしまった。
「……っ…」
靴箱と教室の距離なんて比にならない。
逸らした視線を今さら後悔。
少しだけ俯くと、レモンケーキの甘酸っぱい香りにのって、右側からふっと空気が揺れる音がして。
「─…やっぱり、こないだの子だ」
反射的にばっと顔を上げると、
かくれんぼで友達を見つけた子どもみたいな無邪気な笑顔に目を奪われた。

