* * * * *
[ AM 8:07 ]
携帯のサブディスプレイがその時刻を示した時、あたしはさりげなく窓の外に目を向ける。
誰にも気付かれないように、さりげなく。
「──あ…」
き た 。
靴箱に向かってダッシュする、先輩の姿。
玄関に友達でも見つけたのか、笑顔で手を振りながら。
…その笑顔に、毎朝あたしの心臓はネズミ並みの心拍数を記録する。
あたしの視界から先輩が消えてくまでの10秒。
─あたしの、大事な10秒。
その間、ずーっと目が離せなくて。
なぜかこのドキドキが心地よくて。
毎朝8時7分に、あたしには周りの音が耳に入らないの。

