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「かれんー!あのね、佐藤先輩がね─」
あの試合から2週間弱。
夏穂はお目当ての先輩のアドレスをゲットして、毎朝嬉しそうにメールの内容を報告する。
夜、どっちが長く起きとけるか対決してみたり、模試の偏差値対決してみたり。
すごく、楽しそうな夏穂の笑顔はかわいい。
─いっぽうあたしはというと。
……一度も見かけなかった。
なんとなく探したりしてるのに。
こんだけ会わないなら先輩なのかなー、ってくらい。
…っていうか、こんなん好きみたいじゃんっ。
違う とはっきり答える自信はないけど、好き とは違うはず。
「もう、かっこよすぎるよ~っ!」
顔を赤らめて言う夏穂に、ふと疑問が浮かぶ。
「先輩のこと好きなの?」
かっこいい、かっこいい、って言うから。
あたしの気持ちもわからないし。
似てるんじゃないかなって。
「ん~…好きっていうかぁ、憧れかな」
─なるほど。
ならあたしも、あの人は“憧れ”ってことか…
─…腑に落ちないのは、なんで?