なんでもない



だまって涙をながし続けるなつきをナオが抱き締める。



俺は、なつあの手をとった。


話始めたときから握っていた拳。


きっと気づいているのは俺だけ。



開いてみると、血が一滴、ポトリと落ちた。



爪が食い込んで、皮膚を食い破っても手をほどかなかったなつあは、強すぎる。


もっと俺を頼ればいい。



そうは思ってみるが、俺は今日、彼氏になったのだった。




無理な話だな。











実は、人目見たときからなつあのことを気にはなっていた。



なんとなく、他のやつとは違和感があって。



なつきといるときだけ、なつあを取り囲む空気が軽くなるような気がして、なつきが羨ましいと感じることもあった。




ただどれだけ観察してもわかるのはそれだけで、それ以外はなにもわからなかった。



当然、複雑すぎる境遇も想像すらしなかった。