廊下に貼ってある体育祭のポスターに、ふと目が留まる。
苛立たしげにそのポスターに手をかけ、引っぺがそうとした龍太郎は。
「…だめ…」
一人の少女に制服の袖を引っ張られた。
腰まである異様な長さの黒髪ストレート。
少女の傍らには、彼女よりも遥かに大きい仔馬ほどもある狼。
「お菓子あげるから…機嫌直して…龍太郎…」
右が藍色、左が紅のオッドアイを潤ませながら懇願されると。
「ちっ…遡雫(かんな)と柿ピーがそう言うんじゃ仕方ねぇな…」
ポスターから手を放し、龍太郎は頭を掻いた。
遡雫は何かと謎が多い。
日本では既に絶滅種の狼を連れ歩いている事といい、名字を誰も知らない事といい、何より粗暴でスペシャルバカとして知られる龍太郎に懐いてしまった事といい。
可愛らしい容貌なので引く手数多なのだが、遡雫自身が酷く人見知りで龍太郎以外にあまり接しようとしない為、不思議と特定の相手が出来ないのだ。
最初は別の女子生徒が近づいた事でピリピリしていた城山 小夜(しろやま さよ)でさえ、遡雫に関しては仕方なく黙認している状況だった。
苛立たしげにそのポスターに手をかけ、引っぺがそうとした龍太郎は。
「…だめ…」
一人の少女に制服の袖を引っ張られた。
腰まである異様な長さの黒髪ストレート。
少女の傍らには、彼女よりも遥かに大きい仔馬ほどもある狼。
「お菓子あげるから…機嫌直して…龍太郎…」
右が藍色、左が紅のオッドアイを潤ませながら懇願されると。
「ちっ…遡雫(かんな)と柿ピーがそう言うんじゃ仕方ねぇな…」
ポスターから手を放し、龍太郎は頭を掻いた。
遡雫は何かと謎が多い。
日本では既に絶滅種の狼を連れ歩いている事といい、名字を誰も知らない事といい、何より粗暴でスペシャルバカとして知られる龍太郎に懐いてしまった事といい。
可愛らしい容貌なので引く手数多なのだが、遡雫自身が酷く人見知りで龍太郎以外にあまり接しようとしない為、不思議と特定の相手が出来ないのだ。
最初は別の女子生徒が近づいた事でピリピリしていた城山 小夜(しろやま さよ)でさえ、遡雫に関しては仕方なく黙認している状況だった。


