と。

「……」

小夜の前に遡雫が立つ。

小夜もまた、遡雫を見る。

無口っ子、龍太郎を巡ってガンのくれ合い飛ばし合い。

『ま、まぁ…』

少し頬を引き攣らせながら、小夜が遡雫を見つめる。

『遡雫ちゃんは龍太郎君の事、お兄ちゃんみたいに思ってるだけみたいだし?甘えさせてあげるよ…私は心広いもんっ』

その割には黒いオーラが背後から漂ってますが?

「…私も…」

遡雫が無表情のまま呟く。

「心広いから…龍太郎は小夜と半分こで許してあげる…」

ピキッ!

小夜の血管の切れる音が、龍太郎の耳にだけは運よく?届かなかった。