「これはお前のミスだぞ、神埼」

誰もいない校庭の隅。

体育祭実行委員長は玲菜を叱責する。

「何故藤原の爺さんが赤組に加担した事を早くに知らせなかった?お前は何の為の諜報役だ?」

「……」

実行委員長の言葉にも、玲菜の言葉はない。

誤解のないように言えば、こんな三流以下の男に脅えるほど、玲菜は力のない女ではない。

実行委員長の言葉など耳に入らないほどに、玲菜は別の事に気を取られていたのだ。

(藤原翁…そして丹下…あの二人はどんな不利な状況下でも、勝負を諦めていない…たかが体育祭程度に…)

否。

あの二人に…特に龍太郎にとって、『たかが』などと言われる勝負事は何一つとして存在しない。

どんな小さな勝負にも、全力でぶつかる。

幼稚だし大人げないし頭が悪い。

流石スペシャルバカと呼ばれる男だ。

しかし、その馬鹿のひたむきさに玲菜が揺さぶられているのも事実だった。