「反対!」

藤原翁の言葉に異議を唱えたのは月姫だ。

「兄上の剣腕は、こんな出来レースの体育祭で発揮される為のものじゃないわ!」

「何をぬかすか月姫!知っておるぞ!お前最近『ヤンブラコン』『禁断愛』などと呼ばれておるそうではないか!丹下の小僧から聞いておるぞ!お前もこの体育祭で活躍すれば、いい婿候補が見つかるやもしれんというのに…藤原の娘が嘆かわしい…」

(龍太郎…後で折り畳む!)

密かに木刀を握り締める月姫。

「よいか、剣客たるもの戦場(いくさば)を選ばず!大戦(おおいくさ)じゃろうが小競り合いじゃろうが、己の剣腕を遺憾なく発揮してだな…」

「あぁっ!もううるさいな大じい様は!戦じゃないっての!体育祭だっての!」

宜虎の腕にしがみついて、シッシッとする月姫。

藤原翁は、ぐぬぬぬ…と歯噛みする。

「ええいっ、もうよいわ!この馬鹿弟子にしてたわけ曾孫どもが!」

年齢を感じさせない動きで、藤原翁は踵を返す。

「わしが真の武士(もののふ)というものを見せてやるわい!わしの生き様よぅ見とけ!」

「あっ!」

藤原兄妹の前で、全力ダッシュするご老体。

「わしの生き様って…」

宜虎はガシガシと頭を掻いた。

「武じぃもう死んでらぁな…」