「いでっ!」

「あたっ!」

二人の頭に打撃が加えられる。

「お前らは、なぁにをこんな所で乳繰り合っとるんじゃ!先生は許さんぞ!」

そう言って手にした木刀で『愛の鞭』ならぬ『愛の面打ち』を入れたのは藤原翁。

相変わらず剣道着に下駄履きだ。

彼は藤原兄妹の曽祖父にして、実家である藤原道場の現役道場主である。

まぁ曽祖父といっても、藤原家の道場の横にある小さな祠に住み着いているモノらしい。

アバウトな藤原家の人々は特に気にせず『まぁ我が家の守り神かご先祖様か何かだろう』という事で、曽祖父、としている。

「武じぃ…まさか俺にこんな緩み切った体育祭に出ろってぇのかい?」

ゲンナリといった表情で宜虎が顎を撫でる。

「当然じゃ!宜虎、お前はこういう所でしっかり目立たんから、嫁候補がなかなか見つからんのじゃぞ!わしの二の舞になる気か!わしだって…」

「『もう少し派手に活躍してりゃあ千葉 さな子も幾松もお龍も自分に惚れ込んでた』ってんだろ?聞き飽きたぜ…」

耳をほじりながら言う宜虎。

ちなみに千葉 さな子は幕末の偉人である坂本 龍馬の恋人、お龍は龍馬の妻、幾松は同じく幕末の偉人である桂 小五郎の後の妻である。

藤原翁、一体何時代の人間なんだか。