…そんな龍太郎と各人のやり取りを、密かに見つめている者がいた。

2年の神埼 玲菜(かんざき れな)。

銀髪に隠れた左目には黒い眼帯をしている為、玲菜は残された右の藍色の瞳のみで龍太郎を見つめる。

彼女には目的があった。

『丹下 龍太郎の白組への引き抜き』

実は玲菜もまた、体育祭実行委員長の息のかかった者だった。

こうして学園中を歩き回っては、有能な生徒を見つけ出し、体育祭までに白組のメンバーに引き入れる。

こうする事で白組の体育祭での勝利は磐石なものとなる。

たかが体育祭と言うなかれ。

様々な奇怪な面々が所属するこの天神学園での体育祭は、学園内外で大きなギャンブルの対象となる。

下手をすれば先日の文化祭以上の金が水面下で動くのだ。

ならば確実な勝利を期す為にも。

裏工作は必要だった。