突然現れて、喋りたいだけ喋って去って行った冬月。

龍太郎が首を傾げていると。

「わからないって顔ね」

また突然の声。

どうして龍太郎の周囲には、正面から声をかけてくる人間がいないのか。

振り向くと。

「はじめまして、ね」

モデル体型の女子生徒が、廊下の壁にもたれ掛かっていた。

透き通った水色の髪を、ショートカット以上に短くしている。

その髪と同じ色の瞳で、女子生徒は龍太郎を見る。

「私も同じ…みんな今回は貴方に期待してるのよ?丹下君」

「何がだよ?てかアンタ誰だ」

龍太郎の問いかけにすぐには名乗らず。

「いい『色』ねぇ…猛々しい炎のような紅…他の色を混ぜたって染まる事のない、強く純粋な紅…成程ねぇ、こんな人間もいるのね」

冬月と同様、彼女も言いたい事だけ言って立ち去っていく。

去り際に一言。

「2年の色彩 カレン(しきさい かれん)よ。よろしく丹下君」

己の名前だけを残して。