男か女かさえわからない。

ただ。

「……」

遡雫が柿ピーのふさふさした体毛にしがみつき、少し龍太郎に寄り添うようにする。

龍太郎もまた、険のある視線に変わる。

…この冬月という人物は、何と言うか…アモルと同じ匂いがする。

龍太郎もこの学園に入学して、過去何度も遭遇した『人外』めいた匂い。

しかも冬月から感じられるのは『陽性』ではなく、どこか『陰性』の人外の匂い…。

「あらぁ…」

冬月の狐面の眼が、何故か微かに細まったように思えた。

「スペシャルバカや言うから侮ってたんどすけども…なかなかどうして…『出来るお人』ですなぁ、丹下はん」

何の未練も残さず、冬月は踵を返す。

「おいおい行くのかよ、何の用事なんだ、てめぇ」

呼び止める龍太郎に。

「そうどすなぁ…」

冬月はチラリと、ここにも貼ってある体育祭のポスターを見た。

「身の振り方を考える参考にさせてもらったんですわ…お気に障ったら堪忍どすえ」