何でこの学園ってこんなんばっかりなんだろう…。

その『こんなん』の筆頭、龍太郎はお嬢様、アモルと別れて廊下を歩く。

遡雫は特に何を言うでもなく、柿ピーと共に小走りに龍太郎に続く。

ここは天神学園だ。

当然、歩を進める度に『こんなん』に出くわす。

「あれまぁ、有名人の丹下はんやないですかぁ」

軽妙な口調で呼び止められると。

「……」

そこには縁日で見かけるような狐面を被った生徒が立っていた。

身につけているのは男性用の着物。

腰には帯刀している。

「可愛らしいお嬢さん連れて学園内を闊歩とは、くーっ、やっぱり名の知れたお人は違いますなぁ」

「…何だ?お前」

「あぁ、あかんあかん、名乗るの忘れてましたわ」

狐面は陽気に言う。

「2年の源 冬月(みなもと ふゆつき)言うんですわ。よろしゅうおたのもうしますぅ」