「渡辺純」
「純」
----ドキッ
風早さんは壁についていた手を俺の肩に回して、優しく抱きしめた
すごい背が高くて俺の顔は、風早さんの鎖骨あたりだ
「今までよく頑張ったな」
風早さんの言った言葉は、俺の心を暖かくしてくれた
親がいなくなって、褒められたことなんかなかった
だから、余計に嬉しかった
「うっさい、クソジジィ」
だからこれが精一杯の抵抗
「だから俺まだ23歳だって」
そう言って笑う風早さん
「長い間大変だったな、純。どうせお前のことだから、今まで泣かずに生きて来たんだろ。存分に泣け」
優しく頭とか撫でる手が、安心させる声が、今は無性に幸せに感じた
「もう・・ほっ、と・・うるさ・・・」
俺はただ風早さんに縋り付いて泣くしかできなかった
親が失踪した時だって泣かなかったのに、涙が溢れて止まらなかった
「分かったって」
そうして風早さんは笑うのだった


