――――いた。


ストレートの長い髪を今日はアップにさせて、こっちを見ていた。


ツキン――…


心が小さく痛む。


ヴェールを着けている私の表情なんて遠くからじゃ分からないはずなのに。




――――お、め、で、と、う。




そう口元が動いたのがはっきりと分かった。


まるで私がおばさんを見ているのを分かってるみたいに。




『――――さゆ、こっちおいで』




グッと唇を噛み締めた。




「砂雪」




お父さんが再び私を呼んだ。




「…後悔、してるか?」




ぽつりと落とされた言葉に、私は息が詰まった。


後悔……?




『きっと迎えに行くよ、さゆ』




私は……


ゆっくりと視線を上げた先に立っている人。


真っ黒な髪の合間から覗く、優しい瞳。


……あぁ、そうか。


小さく笑う。




「お父さん、私―――…」




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