ふかふかの赤い絨毯の上を歩く。
私の左側を歩くのは、お父さん。
漁師という職業柄、体に染み付いてしまったのか、真新しいタキシードに身を包んでも、お父さんの体からは潮の匂いがする。
“海こそ俺の最高の相棒だ!”
口癖のように、毎日毎日漁から帰ってきた時に言ってたっけ。
――――懐かしい…
いつも頭に締めている手ぬぐいを、今朝もつけていたらお母さんに怒られてた。
その時のお父さんの困惑した顔を思い出す。
それにこっそりと笑い、お父さんの腕に絡めた腕に力を込めた。
「――――砂雪」
小さな声でお父さんが私を呼んだ。
「貴理が来てるぞ」
「えっ?」
おばさんが?
不審に思われないように、軽く首を動かして辺りを見回すと。

