【短編】優しい、嘘つき





「大丈夫?」



「…あぁ、サンキュ」




私からハンカチを受け取り、口元を拭った真さんはギロリと友達を睨んだ。


「愛だな」なんて感心していた友達はヘラヘラと笑っている。




「お前ら余計なこと言うな!」




今にも友達に殴りかかりそうな真さん。


その頬は恥じらいのせいか、真っ赤に染まっている。




「…っぷ」




堪えきれなくて、小さく吹き出してしまった。


だっておかしいんだもん。


今さら何を恥じらうことがあるんだろう。


真さんが勢いよく私を振り返った。




「さ、砂雪…!」



「ふふっ」



「笑われてやんの〜」



「っるさい!」




噛み付くように真さんは言い返し、バツの悪い顔をした。




「…笑うなよ」




眉を下げた真さんが、何だかとても可愛らしく見えて、私はニッコリと微笑んだ。