県大会まであと1週間だった。
地区予選は毎年通過している南中ブラスだけど、
県大会ではいつも銀賞・・・
まだ県大会の次のステージに立った先輩はいないらしい。
大会が近付くにつれ、
藤崎先生の気合いも増していく。
「クラリネット!!!」
合奏中に飛び交う先生の声。
険しい表情だった。
だけど、カッコイイ…
私はトランペットを吹きながらも、
ニヤける表情をこらえるのに必死だった。
「もう時間ないんやで?いい加減にしてくれ」
先生の関西弁…きゅんきゅんしちゃう。
だめだ、みんな真剣なのに
私だけ先生に夢中になっちゃってるよ…
なんで、こんなにカッコいいんだろう…
先生は51歳で、
お母さんよりも年上。
そしてお父さんと同い年。
そう考えると、
私はとんでもない初恋をしてしまったのだということを思い知らされた。
よくテレビや雑誌なんかで
『恋愛に年齢は関係ない』
とか
『恋愛に性別は関係ない』
なんて文字を目にするけど…
私の場合、そうはいかないよね。
というか、先生はすでに結婚していて
私より2つ上の娘さんや
もっと大きな息子さんもいらっしゃるようだ。
だから、可能性なんて無い。
〝特別な生徒〟を目指したいけど、
先生はみんなに平等の優しい先生。
だから、こんな私にも
優しくしてくれるんだもんね…
叶わない恋というものは
こんなにも切なくて悲しいものなんだ…
