やばい、やばいよ…
先生に呼ばれちゃった!
今まで、先生に呼ばれたって
何にも思わなかった。
そもそも、私なんて
先生に呼ばれる機会が全くなかった。
クラスだって違うし、
パートリーダーでもないし、
上手くも、下手でもないし…
先生からすれば
ふっつ~の、ふつ~すぎる
ただの生徒でしかないはずだ。
「楽器だれかに持ってもらって、こっち手伝って!早く!」
なんで、私だったのかは
全く分からなかった。
だけど、ただただ嬉しくて
先生に選ばれたような気持になった。
「中川先輩!すみません、楽器と譜面持って行ってもらってもいいですか?」
「しょーがないなぁ。先生に好んでもらえるように頑張れ」
そう言って、中川先輩は
私の楽器と譜面を受け取ってくれた。
「ありがとうございます!」
先生は私に
急げ、と手招きしていた。
好きになって間もないのに、
こんな幸せな出来事があっていいの?
私はボールを追いかける犬のように
先生の元へかけていった。
「バスドラ一緒にトラックまで持っていこ」
「はい」
なんで、こんなに喜んでるの私…
本番前の私だったら、
なんで私なの?と面倒くさがってたはず。
だけど、今は尋常じゃないほど嬉しい!
先生の真剣な表情は
とてもカッコイイ。
なのに、笑うととても可愛いし…
51歳とはとても思えない綺麗な髪。
私はいつの間にか
先生が憧れの人になっていたのかもしれない。
それが、ついさっき
「好きな人」に変わったのかもしれない。
