「これ使って」

青年の首にマフラーを優しくまいた。
すると一瞬だけ青年の顔が明るくなった。

「今十時半だよ、ここで何してるの?」
「・・・」

青年に問いかけても応答はなかった。

「えっと、両親が心配してるから早く帰ったほうがいいよ」

すると青年はいきなり天にしがみついた。

「ちょっ・・・えっ・・・!?」
「・・・て」
「ん?」

青年は天の肩に顔を押し付けた。

「今晩・・・泊めてくださ・・・い」
「えぇっ」

青年は震えながら天にしがみついた。

「・・・しょうがないなぁ・・・」
「・・・お願い・・・します」
「おいで、一時的に保護するから・・・」

青年は黙って頷いた。
青年をゆっくり離した。


「どーぞ、あがって」
「おじゃま・・・します・・・」

暖房と炬燵をつけてお風呂を沸かした。

「上着貸して、かけるから」
「すみません・・・」
「いいよ、一時的だし」
「あの・・・」
「あっ何か飲む?」

タイミングが悪く、青年の言葉を遮ってしまった。

「お・・・お願いします・・・」
「コーヒー?ココア?お茶?紅茶?」
「えっと・・・コーヒーで・・・」
「わかった」

天は二人分のコーヒーを持って炬燵に入った。

「はい、どーぞ」
「ありがとう・・・ございます」

かすかに青年の手が震えていた。

「もう少しでお風呂溜まるから」
「その・・・すみません」
「いいって、でも理由聞かせてくれない?」