あれは球技大会の時だった。

男子の種目はバスケとサッカーで、もちろん個人競技のテニスはなかったけど、それなりに活躍した記憶がある。


「春くんバスケも上手いんだね!」

「お前バスケ部の俺より活躍するなよな!」

なんて言われながら、女子の試合が始まるのを待っていた。


「バレーって誰が出るの?」

「うーん。歩美と千夏。あとは、誰だっけ…。」

木下は大して興味なさそうに話していた。


「あ、来た来た。歩美ー!千夏ー!」

木下の視線の先を見たら、バレーに出るクラスの女子がいて、その中に由依がいた。

色白で華奢な由依は、見るからにスポーツが苦手そうだ。

あの細い腕にバレーボールが当たったら折れてしまうんじゃないかと思わずにいられなかった。

なのに、不安そうな顔や嫌そうな顔ではなく楽しそうに笑っていた。


目立つような活発さはないものの、由依が醸し出す雰囲気はほんのりと明るい。