由依は俺の前ではいつも笑ってる。

不安な顔を見せたことがなかった。

あの時までは―


テニス部の朝練があって、そのまま選択授業の教室に向かった俺。

なんとなく同じクラスの奴らが落ち着かないなぁ…なんて思っていた。

「春樹、花崎さんどうしたんだよ?!」

同じ授業をとっている稲田が慌てて教室に入ってきた。

「どうしたって?」

「は、花崎さん、髪巻いてて、メイクしてて、と、とにかく可愛いんだよ!」

由依はいつも可愛いんだよ。

…なんて思いながら、稲田の言葉に引っかかりを覚えた。

深く聞こうと思ったけど、先生が入ってきたから俺たちは席に着いた。


花崎さんの雰囲気変わったよね。

花崎さんってあんなに可愛かったんだね。


そんな言葉が聞こえてきた。

一体どんな風になっているのだろうか…