ある日の昼休み―


「花崎さんっているじゃん。」

近くで昼飯を食べていた本田の口から由依の名前が出て、思わず体が反応してしまった。

「花崎さんって、あの地味な子?」

本田に話しかけられた田邉は由依のいる方を一瞥して、小さな声で返事をした。

なんだよ地味って…。

「昨日花崎さんと同中のやつに中学の卒アル見せてもらったんだけど、中学の時の花崎さんめちゃくちゃ可愛いんだよ!」

「えー!嘘ー!」

「今だってよく見ると可愛いじゃん。」

そう言って、下心満載の顔で教室から出ていこうしている由依のことを見た。

そんな目で見るなよと本田をひと睨みした。


「なぁなぁ春樹、お前花崎さん可愛いと思わないか?」

本田は俺の視線に気付いたのか会話を振ってきた。

「えー、男子ってああいう地味で従順そうな子が好きなの?」

田邉が不満げに言った言葉に反論しようと口を開いた時―

「畑中ー。」

化学の野宮に呼ばれたから、本田たちの会話が気になったものの仕方なく廊下に出た。


「俺、告白してみよっかな。」

教室から出る時に、本田のそんな言葉が聞こえた。