正式に付き合い始めてから1カ月近く経った。

最初は照れて口数が少なかった由依も、俺との距離感に慣れてきたのか自分からいろんな話をしてくれるようになった。

江沢にしか向けなかったあのキラキラした笑顔を俺にも向けてくれるようになって、それを見るたびにニヤけてしまう。


「来週の日曜日、テニス部練習ある?」

久しぶりに2人とも部活が休みで、一緒に帰ることが出来た。

「来週…、ないかな。」

由依からデートの誘いか?

「地区音楽会で吹部が演奏するの。もし時間があるなら聴きに来てくれない?」

「俺、行っていいの?」

「吹奏楽とか、興味ないかな?」

由依は少し不安そうな顔する。

「そんなことない。行くよ。」

ちゃんとした舞台で由依が演奏している姿を見るのは初めてだ。

俺の返事に満足したのか、由依は満面の笑みを浮かべる。


「由依、楽しい?」

「ん?」

「吹部、楽しい?」

「うん!大好き!!」

眩しいくらいの笑顔。

俺が一目惚れした笑顔。