その言葉に、幾多は軽く肩をすくめ、

「そうさ。だって、意味がないだろ?」

ゆっくりと振り返った。

「政治家ってのは、あんなものさ。そして、そんな政治家を選んだのは、国民…いや、平凡な国民ではないか。無関心な国民を利用して、自らのエゴを通してきた支援者達だ。そんなやつらは、殺したいが…政治家を殺しても、社会は変わらないよ。また同じような政治家が、顔を変えて就任するだけさ」

少しため息をつくと、幾多は前を向いた。

「政治家を変えても仕方がないと?」

驚く女に、幾多は話し出した。

「いろんな思想や宗教が、絡む政治の世界。彼らが組織で、投票する。それで、政治は決まる。国民の義務である税金も、社会そのものも!だけど、民衆はそれでもいいと言うように、選挙に行かない。そのことが、どれほどやつらにつけこまれているかを知らない」

幾多は、フッと笑い、

「多くの人間は、本当の自由とは何かを知らない。今が、どれ程恵まれた時代かということをね。政治に無関心でも、ある程度不自由なく生活できる」

雑居ビルから出ると、人々で溢れた町並みを見つめた。

「自由とは、知識を情報を得れることだ。その為には、最低でも学校で理解力を学ぶ必要がある。しかし、多くのガキがそれを放棄、放棄することが自由と思っている。いや、違う!自ら無知になってどうする?自ら、奴隷に戻ってどうする。逆に、受験という偏った知識を得るものは、社会の支配階層に入れるが…彼らも、真の意味で自由は知らない。この国自体が、自由を知らないのさ。なぜならば、民衆が自らの手で勝ち取ったことがないからさ。その癖、生まれながら当然の権利と思っている」

幾多はため息をつくと、人波を避けるように歩き出した。

「この国は、国としてのあり方も、国民としての権利も、人間としての自由も放棄している。近い内に滅んだとしても、仕方がない。選択しなかったんだからな」