ゆっくりと家の中に入る深帆を見送った。

もう深帆の姿が見えなくなってようやく歩き出した。

手には、まだ深帆の手の温もりが残る。

…唇には、結衣とキスした感触がまだ残る。

いつになったら消えるのだろう

結衣への気持ちも。

…本当は、まだ結衣が好きで。

でも深帆も大切で。

嘘をついて後悔した。

でも、本当に深帆を好きになりたい…。

結衣よりも好きって思えるようになりたい。

俺は無我夢中で走り、家の中に入った。

玄関のドアを閉めた俺は自分の部屋にも向かわずに、真っ先に洗面台へと向かった。

蛇口を捻り擦るように唇を洗った。

流れる水と共に後悔も結衣への気持ちも流されてしまえば良い、

そう思った。