「……え?」
一瞬の間が開いて、あたしは瞬の顔を見上げた。
そんなあたしを見て、瞬はもう一度口を開いた。
「なあ…葉月、ちゃんと聞いてる?」
「えっ!?……あ、うん…」
「え、マジでいいの?」
……あれ?
あたし今、『うん』って言った?
顔を上げた瞬間、唇に柔らかいものが触れた。
目の前にある、瞬の顔。
瞬、今…何したの?
そしてすぐにはっとして、あたしの顔は真っ赤になった。
「…これからよろしく、葉月」
「……う、うん…」
ニコリと笑い、瞬はもう一度あたしの手を握り直した。
そのまま何を話すこともなく、黙ったまま家まで帰った。
瞬と二人きりなんて、今まで数えきれない程あって。
本当は誰よりも慣れてるはずなのに…
今まで生きてきた中で、一番ドキドキした瞬間だった。

![[新連載]君への想い、僕らの距離。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.758/img/book/genre1.png)