「藤原さんっ」
後ろで新里君が私を呼ぶ声がきこえた。
だけど私は振り返ることもせず、
ただ呆然と、私の腕を引っ張る天野くんの後姿を見ていた。
どうしちゃったの天野くん?
どこに連れて行く気?
今どんな顔をしてるの?
私たちは図書館を出て、図書館から少し離れた人気の少ない路地裏に来た。
そこで天野君は足を止める。
「……」
「……」
じっと私を見つめる天野君。
私も無意識に天野君を見つめ返していた。
あの時の目。
私と付き合っていた時の、
私が大好きだった頃の、
サッカーしてる人を見る時の、
目をしてる――……。

