「…智隼、俺にはまだ、忘れられない子がいるんだ。きっと、もうその子は俺の事を見てくれないと思う。だけど、俺は忘れられないんだ。…智隼も大好きだよ。すごく、大切に想ってる。だけど、そういう事は出来ない」


「…………」


どうして


どうしてこんな時に、真面目な顔をするの?


どうせなら、いつもみたいに、軽くあしらってよぉ。


そんなに…

真剣に他の子を見ないでよぉ…。




「うぅ~…いっちゃんのバカぁあ」


泣きだす私の頭を、

いっちゃんはいつも以上に、優しく

撫でてくれた。




「俺は智隼をこうやって、撫でてあげられる。だけど、その子には出来ないんだよね」



小さく笑ったいっちゃん。

その言葉で、私はなんだか分かってしまった気がした。