「もう気付かれてる頃かな」

ヘンゼルとグレーテルは、手を繋ぎながら森の中を歩いていた。

「大丈夫かしら。「彼ら」が嗅ぎつけないわけはないと思うわ」

グレーテルは後ろを振り返る。もう馬車も、建物も見えない。日はほとんど落ち、辺りは闇に包まれていく途中だ。じきに二人も闇に取り込まれるだろう。

「すぐには来ないさ。それに「人間」はこういう曰く付きの場所にはきっと来たがらないよ」

「呪いの森…だったかしら?素敵な名前よね」

グレーテルはふふっと笑った。楽しそうに腕を大きく振りながら歩く。

「何がいるんだろうね」

「楽しみだわ」

二人はまるで陽の下で楽しく散歩する子どものように、闇の中を突き進んでいった。