「ねぇ、ヘンゼル」

「なぁに姉さん」

「あとどれぐらいで着くのかしら」

ガタン、と床が揺れた。二人の周りに積まれている木の箱や荷物も一瞬揺れた。

「わからないなぁ。何処に向かってるのかも僕達は知らないしね」

そう言ってヘンゼルはほとんど自分と同じ顔の姉に微笑んだ。
壁の隙間から漏れる月明かりに照らされた姉の顔を見て、綺麗だな、と思った。

「綺麗だよ、グレーテル」

ヘンゼルは真っ直ぐな眼差しで姉に言った。
グレーテルは少し顔を赤らめたが、ヘンゼルと目は合わせたまま。

「ありがとう、好きよ、ヘンゼル」

そう言ってグレーテルの頬にキスをした。

「さあ、もう少し寝よう、姉さん。きっとまだかかるんじゃないかな」

そうね、とグレーテルは言うとヘンゼルの肩に身を預け目を瞑った。すぐに寝息をたてはじめる。

グレーテルはヘンゼルの腰まで長い髪の毛を手で梳きながら想った。



―――神様、

あなたが憎いです。