「俺さ……生まれた時からさ、特別じゃん。家とか、顔とか」

「だからさ、何もしなくても色んな奴が寄ってきたワケ。

全然上手くもないのに、ケンちゃんすげーって言われんの」

「俺は小さい頃何も知らなかったから、色んな人が近くにいるのが素直に嬉しかったわけ。

今考えてみりゃ、そいつらみんな親に言われて近付いて来たんだと思うけどな」



「んで、みんなの言葉信じて……俺は凄い、特別なんだ、って思った時に、すげぇ奴に会った」

「幼稚園の体育祭があって。俺は徒競走に出たんだけど

一緒に走った一人がすげぇ速くてさぁ。どんだけ頑張っても追い越せないんだ」

「俺は結局2位だった。そいつはもちろん1位だった」

「だけど、俺は親や他の人に褒められて、そいつは親に怒られてるの見たんだ。

鎌谷君にどうして勝ちを譲らなかったんだ、って」