それでも朝はやって来る

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目の前に渡された白いマグカップからは温かな白い煙が出ていた。

それを両手で掴みながら、朝子は冷めるようにホットミルクの表面を吹いた。


「……温かい」


マグカップから伝わる熱がやけに現実を思い出させて嫌だった。

チリチリと熱で掌が痛かった。


「熱いようなら、少し冷ましますか?」


朝子を気遣うように、真楯がそっと囁いた。

着替える気もおきず、破れたままのブラウスの上に毛布を羽織っていた。



なんで…

なんであんなこと言っちゃったんだろ…



下唇を噛み締めた。



付き合ってるわけでもないから、他の人とキスしてたって…

その先まで…してたって…

あたしに何も言う権利はない…




アハハ…

思い出した…


あたし…

黄金率だから、悠里にお金で買われただけたっけ…



なんだ…




そっか…




「あまり噛み締めると、血が…」


真楯がヒンヤリとした指先で、色の変わった朝子の唇にそっと触れた。

真楯の指先が朱色にじわりと染まった。
なんの躊躇いもなく真楯はその指を口に運んだ。


「わわわわッ…ま、真楯センセ…!」


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