それでも朝はやって来る

悠里は力任せに、かえでを狭いベットの上に組み敷いた。


「全く誰のせいで、こんな面倒くさいことやってると思ってるんだよ!」


保健室の壁をドンと力任せに悠里は叩いた。


「お前、俺の婚約者で黄金率だったくせに…他の男と…」


「悠里…来て…」


かえでは、そっと壁に押し付けられた左手を自分の方に引き寄せた。




朝子は全力でその場から逃げ出した。

眼を閉じても閉じても、瞼の裏で繰り返される先ほどの景色。


首を振っても消えない。


自分の気持ちに気づいたばかりなのに…

神様は意地悪だ…




校門の前まで走った。

辺りは暗くなり、サッカー部が照明をつけて練習していた。

生徒の影はあまりなく、静まり返っていた。


「あれ、佐伯さん?」



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