それでも朝はやって来る

「熱あるのか?」


ひんやりとした櫂の掌が、朝子の額を触る。


「ん、熱はなさそうだな」


櫂がニコリと笑う。

昔から変わらないこの笑顔。

サラサラな自然な薄茶色の髪に、トレードマークの黒縁眼鏡。
その奥に見え隠れする髪の毛と同じ薄茶色の瞳。


櫂がそこにいるだけで、ふわりと周りが暖かくなるそんな人だ。


この笑顔に何度も助けられた。


「ん?何か俺の顔についてるか?」


久々に櫂の顔を見たら安心して…


「ちょ…朝子!?」


何もかも櫂兄に話してしまおう。
悠里と真楯が来たこと。
お父さんに借金のかたに売られたこと。


櫂兄なら、何とかしてくれるはずだ。


目をつぶると頬に温かいものが流れていった。


「…クソッ!」


優しい櫂からは想像できない低い声。
力強く抱きしめられた。


「お前を虐めるやつは誰だろうと許さねぇ」



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