それでも朝はやって来る

ぐぃっと引っ張られて、また唇を合わせることになった。


形のよいふっくらとした唇が、朝子の上唇を挟み、移動して下唇を甘噛みした。


キスしながらも、悠里は黒目がちな大きな瞳で、見つめてくる。

まるで目をそらすのは赦さないと言わんばかりに、強く熱く…



彼とのキスはいつしか、蜜のように甘くなっていった。




*****



屋上へと続く階段を息をきって上がってきた人物がいた。


ガチャリと扉を開けると澄みきった青空が眩しかった。


「おっかしいな、確かに朝子だと思ったんだけど…」


キョロキョロと朝子を探す。





あれ、櫂兄さん!?

彼には建物の後ろにいる朝子たちは見えない。


「またイジメられてないといいけど…」


ひとり櫂は呟いた。

櫂から見えてないか心配になって、悠里から目をそらしてまった。

それがいけなかった。
悠里は何を思ったのか、朝子の一番弱い上顎の裏を軽く舌で擦った。


「…んんっ…!!」


腰が砕けて力が入らない。





「朝子!?」


声のする方に櫂は近づいた。


そこには、地べたに座り込んだ朝子がいた。


「大丈夫か?」


櫂はさっと駆け寄った。


「…櫂兄…!?だっ…大丈夫、何でもないから…」


たっ…立てない…
もう!あいつ、なんてことしてくれるのよ!!

明らかに、櫂兄疑ってるじゃん。
しかも自分はとっとと居なくなっちゃうし。


櫂がなかなか立たない朝子を心配して、顔を除き込んだ。

櫂の動きが止まった。


「朝子…お前なんて顔してんだよ」


顔は上気して、頬は紅く染まり瞳は潤んで艶を帯びていた。



.