それでも朝はやって来る

ガタゴトと机をつけて教科書を開いた。
英語は苦手で、教科書のどの部分を読んでるか、いつもわからなくなる。


「あの女、うぜーな」


ふいに悠里が小声で言ってきた。

なんと言ったか分からず、右を向くと悠里の顔がすぐ近くにあった。


あ…


ドキンと心臓が羽上がった。
少し大人びた横顔。

チラリと悠里がこちらを見て視線が交差した。


「何見とれてんだよ、格好良すぎるからって…」

「はっ…はい!?」



「ん…じゃ、佐伯さん。答えをどうぞ」

「えっ!?」


急に真楯に当てられた。

問いくつ?
まずい英語の授業中だった!


ええっと…
全然わかんないや…

こうなったら、謝るしかないな。
慌てて立ち上がって、


「えっと、すいません!聞いて…」


あたふたした朝子を見て、肩を震わせながら隣で悠里が失笑してる。


「budget」


小声で悠里が教えてくれた。


「バジェッ…ト」

「はい、正解」


あー助かった!!

ストンと椅子に腰かけた。


「佐伯さん、ちゃんと授業に集中して!今度テスト悪かったら、補習ですよ」


バレてた…


「ちなみに、八重樫君。答えを教えた罰として9ページの例題文全て読みなさい」

「なっ、なんで俺がっ!?」


9ページって上から下までビッチリ英文じゃん!
朝子にはなんて書いてあるかサッパリ…

真楯、悠里にコキ使われてる普段の腹いせかな…


「クソッ、おぅ教科書貸せ」


超ー流暢な英語ですらすらと英文を読んでいく。


「スゴーイ!!八重樫君、バイリンガルなの?」


西園寺を始めあちこちで称賛の声が聞こえた。


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