それでも朝はやって来る

櫂は、父親のオフィスに足を踏み入れるのも久しぶりだった。

社長の息子でも、厳重なチェックを受けて、来てから30分は1階で足留めをくらった。

入り口では空港並みの検査を受け、鞄も携帯もロッカーに預けさせられた。

それを不満に思ったことはない。


「お前から、連絡してくるなんて珍しいな。なかなか家で会わないから、ちゃんと学校に行ってるか心配してたんだぞ」


高校生になった自分をまだ小学生のように扱う父を疎ましく思った時期もあったが、それももう慣れた。

父の中では、息子の成長も忙しさの最中忘れてしまったのだろう。


「よく言うよ。忙しすぎて家に居ないくせに」


東雲探偵事務所は、名前こそはパッとしないが業界トップの探偵事務所だ。

都心の一等地にある本社ビルは他の高層ビルよりも頭ひとつ大きい。

櫂の父は一人で事務所を立ち上げ、今の規模まで築き上げたのだ。

現在は第一線に立たないが、彼の右腕たちは揃って優秀だ。


「父さんにお願いがあります」


「何だ……久々に会えたと思ったら、仕事の依頼か」


父は少しガッカリしたように、肩を落とした。

座っていた重厚な椅子に背を預けると、向かいにあるソファに座るように促した。


「父さんの相談料は高いぞ」





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