それでも朝はやって来る

魂が抜けたように、朝子は一点を見つめていた。


朝子はただあの場から逃げ出したい一心だった。


あの部屋から出てから、涙も枯れ果てたのか一筋も出ていなかった。



カチャとドアが開く音がすると、入り口からマグカップを二つ持って入ってきた。



「朝子様…」



悲しそうに微笑んだ。


渡されたマグカップには、ホットミルクが入っていた。

ラム酒のいい香りがする。


冷えきった体には、温かいマグカップは少し熱いようにも感じられた。



じんと指先が痺れる。



ここは真楯の部屋だろうか、モノトーンで揃えられた家具が必要最低限しか置いていなかった。


黒い上質な皮張りソファに足を投げ出して座っている朝子の足元に真楯は腰を下ろした。



前にもこんなことがあったな…


怖い思いをした後、真楯が必ず傍に居てくれた。



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