それでも朝はやって来る

「さく…ら…ちゃん…?」


男たちが皆、気絶してしまうと、ゆっくりと『ソレ』は朝子に近づいてきた。



この目は、あの『眼』だ。



朝子の顎をつかみ、桜小路は自分の方を向かせた。



「ふぅん、あんたが『黄金率』ってやつ?」


ペロリと朝子の唇に、桜小路は舌を這わせた。


「確かに、美味しいかも♪

八重樫の跡取りが夢中になるのもわかるなぁ…」


瞳以外は桜小路なのに、さっきとは全くの別人だ。


「すぐには食べられないから、少し大人しくしててね」

「さくらちゃ…」


気絶した男を足で蹴飛ばしながら、桜小路は笑った。


「澪なら、奥に引っ込んじゃったよ。昔から怖いことがあるとすぐ私と代わっちゃうんだもん。ずるいよね~」


朝子は始め、何を言われているかわからなかった。



奥に引っ込むって……


…………何?



「あなた、さくらちゃんじゃないの?」


きょとんとした顔で、『ソレ』は朝子を見つめ返した。


「……桜小路 澪に決まってるじゃない。第14代目、桜小路家の跡取りだよ。上手くいけば、世界は桜小路家のものになるんだから…」


緑に光る瞳で、朝子を睨み付ける。


「あなた、邪魔なんだよね。


上がうるさいから、今はあんたのこと食べないけど。オッケーがでたら、一番始めに私が食べてあげるからね、ふふふ」


深い緑色の目に吸い込まれる感じがして、朝子は気を失った。



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