それでも朝はやって来る

「痛ってーーッ!!!!」


朝子は殴られず、男が悲鳴をあげていた。

怖くて震えていたはずの桜小路が、朝子を殴ろうとしていたサラリーマンの右手に噛みついていたのだ。

騒ぎを聞き付けた店員が走ってくるのが見えた。


「逃げるよ!!」


夢中で噛みついていた桜小路をサラリーマンから引き剥がした。


大事になる前に逃げ出さないと!


とりあえず広い店内を逃げた。

ふたりは、空き部屋を見つけて中に入った。


呼吸が上がって上手く息が吸えないのか、桜小路が何度も咳をした。


落ち着かせようと、朝子は両手で桜小路を包み込んだ。


「大丈夫。もう追ってこないから…」


桜小路はぎゅっと朝子の腕を掴むと、深呼吸をした。


「大丈夫だから…」


一気に緊張が溶けたのか、桜小路は声をあげながら泣き始めた。

ぎゅっと抱き締めて、耳元で囁いた。


「きっと、大丈夫……助けてくれて、ありがとう」









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