それでも朝はやって来る

朝子は温かいコーヒーを入れ、桜小路はリンゴジュースを入れ直しカナが待つ部屋へと戻ろうと、後ろを振り向いた瞬間…


桜小路は後ろを通ったサラリーマン風の男にぶつかってしまった。


「何すんだよ、このブス!!」


ぶつかった拍子に、その男が来ていたスーツの袖口を汚してしまった。


「ああああ…ごごごめんなさい」


必死で謝る桜小路は、男にすごまれてガタガタと震えていた。

スーツの男と一緒に来ていたらしい二人組も桜小路を囲みだした。


「スーツ汚して謝っただけで済むと思ってんの!?」

「あああ……」


追い込まれたハムスターみたいに、男たちの一言一言に震え上がっていた。


思わず朝子は、桜小路が抱えていたリンゴジュースを取り上げて、いちゃもんをつけてきた男の頭の上からかけた。


「ごめんなさい。手が滑って…」


朝子はこういう人間が一番嫌いだった。


ちょっと濡れたぐらいで大騒ぎして、女子高生だからってなめてかかって。


自分なんかただの酔っぱらいの癖に…


自分より弱いものにしか威張れないヤツ。



「ふざけんな!お前!!」



リンゴジュースをかけられたその男は、朝子の襟具りを掴むと手をあげようと右手を振り上げた。


殴られるのを覚悟で、朝子は目をつぶった。


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