それでも朝はやって来る

喉が乾いたので、飲み物を補充しようとドリンクコーナーの前をうろうろしていると、桜ちゃんがやって来た。

朝子の姿を見かけると、ペコリとお辞儀をして隣に並ぶ。


「桜ちゃん、歌、うまいね」


ジュースを入れながら、隣にいる桜小路に話しかける。


「でも、なんか意外…

折角可愛い声なのに歌うのは男性ボーカルが多いんだね。でも、上手くて聞き惚れちゃったよ~」


隣にいる桜小路が微動だにしないのが気になって、チラリと視線を向ける。

リンゴジュースのボタンを押したまま、真っ赤になって固まっていた。


「あああ…全然上手くないし……、調子に乗って歌いすぎて…すすすすいません!!」


いつの間にか、リンゴジュースがコップから溢れていた。

それでも、ボタンを押したまま桜小路は立ち尽くしていた。


「最近、あんまりいいことがなくて…一緒に騒いでくれてありがとう」


溢れたリンゴジュースで、びしょびしょに濡れた手をそばにあったおしぼりで朝子は拭いてあげた。


「折角仲良くなれたんだもん。また、歌いに来ようね」


にこりと笑うと、桜小路もつられて笑った。

しかし、すぐにそっぽを向いて、困った顔をしていた。


「………ごめん。あたし、カナぐらいしかあの学校に友達いなくて…

一回遊んだぐらいで馴れ馴れしかったかなぁ…、ごめんね」



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