不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生

そのコンパクトは、初給料で買った俺からの誕生日プレゼントだった。

みずほはそれで化粧をする訳でもなく、鏡の代わりに使用してくれていた。


『瑞穂の為にうーんと可愛い女性になるね』
何時もそう言いながら。
何時か使えるその日を夢見るような目をしていた。


そして……鏡に写る俺に向かってウインクをしてくれた。

俺だけには解る鏡越し……俺達は本当にラブラブだった。




みずほの落ちていた近くの植え込みの中にあったコンパクト。

それが何を意味するのか?

それは死ぬ間際までみずほが見ていたと言う事だ。


俺はそのコンパクトを開けて愕然とした。


化粧パフの上の鏡面に、赤い口紅で言葉が……


《死ね》
と書いてあった。


――やっぱり……


――自殺なんかじゃない!